この事件は、平成24年請求異議等事件での被告水道メーターの1部が原
告土地に越境して20年余経過し取得時効が完成しておりましたが、原告
が土地の所有権に基づき被告水道メーター越境部分の排除を求めて代理人
弁護士を立て訴えてきた事件です。
訴えの趣旨は、次の通りです。
①水道メーターの越境部分を収去せよ。
②訴状送達の日から収去するまでの間月1万円の割合による金員を支払え
③訴訟費用は被告の負担とする。
との判決並びに仮執行宣言を求める。
被告答弁書は、次の通りです。
①原告の請求はいずれも棄却する。
②訴訟費用は原告の負担とする。
との判決を求める。
その根拠は、次の通りです。
①水道メーターは前所有者が建物新築以降20年以上経過し、被告が取得
してからも既存状態のまま善意無過失で10年の占有が経過しており、
道メーター越境部分の土地の取得時効は完成しており所有権を主張す
る。
②原告主張の②は前項により否認する。
原告は、次の通り反論してきました。
①請求異議等事件において被告準備書面で水道メーター部分の土地取得時
効の権利を放棄している。
②境界確定請求事件判決の原告越境部分を収去土地明渡し完成後に適時適
切に収去するとしている。
③被告は建物取得時に、無過失による占有開始とは認められない。
被告準備書面にて水道メーター部分の土地の取得時効の権利を放棄すると
述べたのは条件付であり、水道メーター越境部分の収去と引換に境界点に
境界標・境界線に境界石を埋設することに原告の同意と協力を得ることが
文面の意図するところであると反論しました。
法律に素人の被告の言葉尻を原告に逆手に取られたことは錯誤に当たるも
のであり、被告の真意に反してまでも原告には被告の真意に対する錯誤無
効を主張することはできないものであると反論しました。
裁判は平成27年2月10日第1回から平成27年4月28日の第3回ま
でで終わりました。
判決は、次の通りでした。
①被告は水道メーター越境部分を収去せよ。
②原告のその余の請求は棄却する。
③訴訟費用は2分の1を原告が負担とする・2分の1を被告が負担とす
る。
④第1項に限り仮執行ができる。
この判決に被告は、水道メーター越境部分の取得時効完成後に、境界標・
境界石の埋設を前提の時効利益放棄の意思表示の一言をもって取得時効が
認められなかったことに、民法95条(錯誤)の適用で合理的理由の有無を争
うことも検討いたしました。
然し原告のみに越境部分の収去土地明渡しをさせて終われば、原告に公平
を欠くものと受け取られ恨みを買うばかりではと考えて、不満は残りまし
たが判決を受け入れることにいたしました。
平成27年5月22日被告は、原告代理人弁護士の立会のもと越境水道メ
ーターを撤去して、収去は完了いたしました。
撤去跡敷地に新規水道メーターを設置しました。
その後原告から訴訟費用2分の1の請求は無く、被告も同様訴訟費用を請
求しませんでした。
裁判を受ける権利は、訴訟の当事者が訴訟目的の権利関係につき裁判所の
判断を求める法律上の権利を有する場合、裁判所においてのみ裁判を受け
る権利を保障したものです。